カードゲームアニメの原作者として語る「カードゲームの対戦シーン。その見えざるノウハウ」 第一回・偉大なる遊戯王の『発明』!

  • 2017.12.28 Thursday
  • 11:06

★『カードゲームの対戦シーン。その見えざるノウハウ』

第一回・遊戯王の『発明』!


■序文
こんにちわ。池田(池っち店長)です。

 

実のところ僕は、カードゲームそのものだけでなく、「カードゲームアニメ」の研究家でもあります。

 

元々、カードショップを経営する中で、半分趣味、半分仕事として行ってきた「研究」ですが、最終的になんと、カードゲームアニメの原作を務める機会に恵まれました。
(現在も放映中の『フューチャーカード・バディファイト』の元原作者。更に、2019年公開予定の、アニメ・TCG連動企画『ドミネイター』の原作を務めています。)

 

カードゲームアニメの研究で得た知識やノウハウを、実際に仕事として生かすことが出来たのです。

 

そこでふと思い立ちました。

 

僕が「研究家」として学んだ知識、そして、実際に原作者として仕事をしているうちに発見した、新たなノウハウ。

これはもしかしたら、ある程度皆さんと共有したほうが良いのではないか?と。

 

カードゲームアニメの演出一つとっても、様々な試行錯誤が繰り広げられ、数々の天才的なアイディアが生み出されて来た……という事実には、あまり日が当たっておりません。

 

こういったノウハウは、より多くの方達にご理解いただけてこそ、より価値が高まるのではないでしょうか。

 

僕はカードゲームで食ってきた人間です。特に、小売業界の人間として、直接カードゲームを買って下さる皆さんに食わせていただいた身です。

その中で学んだ知識を皆さんと共有するのは、一種の恩返しにもなるかな?と愚考した次第です。

 

そんな訳で、僭越ながらこの私、池田が、カードゲームアニメの素晴らしいノウハウ、その一端を、皆様にお伝えさせて頂きます。お楽しみいただければ幸いです。

 

第一回はやはり、カードゲームアニメのパイオニアにして、現在のなおぶっちぎりナンバーワン『遊戯王』について、語りたいと思います。


■そもそも、「デュエル!」とは?

僕の知る限り、世界で最初に「カードゲームのバトルシーン」を漫画で描いた作品は、やはり『遊戯王』です。

 

ほんの数ヶ月の差で『デュエルファイター刃』という漫画作品でも、魅力的な対戦シーンが描かれ始めることになるのですが……これもまた名作なので、カードゲーム漫画に興味のある方はぜひ、ご一読下さい。

 

さて。遊戯王。

 

漫画家、高橋和希氏の天才的なコマ割り、演出や台詞回し、そして個性的でありながら万人受けするモンスターデザイン等により、『遊戯王』で描かれたデュエルシーンは、たちまち人々を虜にしました。

 

特筆すべきは、この「格好良さ」が、アニメ化された際に、世界中で熱狂的に受け入れられたことです。(なんと、世界88カ国でテレビ放映された!)

 

「日本人にだけ受ける漫画」ではなく、世界中に受け入れられたという事実。しかも、全く新しいジャンルの戦闘シーンが!

 

これは、

「全く新しいものでありながら、最初から世界に認められるという『普遍性』と、『完成度』を併せ持っていた。」

という驚くべきことで、僕が高橋和希氏を「天才」と断言する論拠の一つとなっています。


実は、これに全く下敷きがなかったか?というと、少し違っていまして。

要は遊戯王のデュエルシーンは、「ポケモンバトル」なんですね。

 

モンスターを出す。そしてモンスター同士を対戦させる。この様式自体は、元々ポケモンのアニメで描かれ、世界中で放映されていました。

 

なので遊戯王も、初見で見ても、

「ああ、要するにポケモンだな」

と、違和感無く見れた人々が、世界中に居たという事でしょう。

 

しかし勿論、だからといって遊戯王のオリジナリティは色あせません!


■遊戯王の「演出上の発明」その1、トラップカード

 

遊戯王の漫画が「発明」した要素、概念は、数え切れないほど沢山あります。

 

まず、僕が発明の筆頭だと考えるのは、『トラップカード』です。

 

実はトラップカード(カウンター)は、厳密には伏せる意味が無いんですよ。

 

トラップカードの眼目は、要するに「カウンター」です。相手が何かしたら、それに対して「相手のターンに何かする」のが役割です。

 

これ、速攻魔法(MTGで言えばインスタント魔法)が、手札からカッ飛んできても、効果や挙動しては同じなんですよね。(でしょ?)

 

しかしわざわざ「伏せる」事で、相手に

「何かするぞ!」

と「意思表示」してるんです。

 

よりぶっちゃけて言うと、「意思表示」なんてしない方が強くて……予告したり、相手に情報アドバンテージを与えるなんて、損じゃないですか。

 

なのにそこが人間の面白いところで、「何かするぞ!」と意思表示されると、動きが「すくむ」んですね。

 

実際、一枚トラップカードが伏せられているだけで、攻撃もせずにターンエンドする子供達を、たくさん見てきました。

(今更皆さん分かっているでしょうが、トラップがあっても、基本的には無視して攻撃するのがアドです。例えミラフォがあっても、リスクリターンの計算をキッチリした上で、一部を守備表示にしたりして攻撃し、使わせれば良いわけで。)

 

そして何より、トラップカードは、ゲームとしての現実の強さ?よりも……ここが重要!

 

「漫画での掛け引きのシーンを盛り上げる、演出上重要なファクターを生み出した。」

 

のです!

 

さっきも説明した通り、本当は速攻魔法にして、手札から突然プレイしたほうが「強い」んです。

 

しかしわざわざ「伏せて」漫画で絵として見せることで、読者の視点から見ても、

 

「攻撃すると、何かされる可能性があるんだな……一体どんなカードだろう?!」

 

と、対戦の「流れ」を予測させ、興味を持続させるフックになっているんです。

 

つまりトラップカードとは、ゲームのシステム上必要なものなのではなく、漫画の演出上必要だったから発明されたもの、と言えるでしょう。

 

単にゲームを作るだけの人からは、出てこない発想です。

あくまで

「漫画として面白い作品を作ろうとした、高橋和希氏だからこそ生み出せたシステム」

と言えるでしょう。


■遊戯王の「演出上の発明」その2 デュエルディスク

 

さて。遊戯王の生み出した「発明」。その2は、

『デュエルディスク』

です!


皆さん覚えていらっしゃるでしょうか。今となっては、遊戯王という作品自体のアイコンとも言える、この『デュエルディスク』ですが、実はこれ、作中にも、中々出て来なかったんですよね。

 

デュエルディスクが生まれるまで、高橋和希氏も相当、悪戦苦闘しています。

 

何が言いたいか?要は、こういう事なんですよ。

漫画が「物語」である以上、それは、キャラクターどうしの対話劇になります。

 

例えば、宿命のライバル同士が、運命に導かれて、

あるいはストーリーの都合上(笑)、街角でバッタリ出会ったりした時……

 

「貴様!良くも城之内君を!」

 

「くくく……決着をつけるか?!遊戯!」

 

望むところだ!行くぞ!……近くのお店のデュエルスペースへ。」

 

となると失笑モノです。(笑)

 

解りますよね。要は、カードゲーム漫画は、対戦するための「舞台装置」が必要なんです。

 

遊戯王の漫画もこの点、最初はかなり苦戦していました。

「いつ、どこに集まって対戦する」

という決められた舞台でしか、対戦できなかったのです。

 

これには高橋氏も、頭を痛めていたでしょう……要するにカードゲームは元々机が必要なものなので、物語と対戦シーンをシームレスに出来ないんですよね。

 

なので『デュエリストキングダム編』では、

「最初っから対戦台があっちこっちにある島を舞台にしてしまえ!」

という事を考えたわけです。

 

これは成功しました。キャラクター同士がどこでぶつかっても、舞台が島である限り、対戦台は直ぐ近くにあるから、シームレスに対戦が始められる。

 

しかし高橋氏は、「それ以上」を求めていました。最終的にデュエルディスクに結実するまでは、今から見れば素っ頓狂な、試行錯誤が見受けられます。

 

そう。海馬のカップ焼きそばとか。

 


これは流行らない。(確信)

 

そもそも、ゲームのルールが違う。

海馬くん、勝手にルールを変えてはいけない。ゲームデザイナーのペガサスを差し置いて。

 

 

しかもペガサスのお膝元で。(笑)

 


お前がふざけるなだよ。(笑)

 

攻撃したら死んじゃうぞルールとか。駄々っ子か君わ。


そして、バトルシティ編!

ついにデュエルディスクが登場します!

 

ここまで読んでくださった皆さんなら、もう、これがどれだけすごい発明なのか、お解りでしょう。

 

出会って5秒で、すぐデュエル!!(なんのパロディか、気付いた人はヤバいので黙ってましょう。)

 

いや、これは本当にすごい発明です。遊戯王最大の発明は何か?!と聞かれたら、

 

「そもそも、カードゲームを漫画にしたこと」

と云うべきか、

 

「カードゲームを、立ったままどこでも戦えるガジエットを生み出したこと」

と答えるべきか、悩むぐらい。

 

それぐらいデュエルディスクは、「遊戯王」という作品の「核」です。

 

これは玩具業界の考え方なんですが、玩具というものは、実用品では無いにも関わらず、

「格好良い!」

「欲しい!」

と思わせる、「本来は価値の無いものに価値を与えること」が出来てこそ、玩具なんですよね。

 

仮面ライダー変身ベルトなんて、実用性無いじゃないですか。ベルトが必要なら、普通のベルトを変えばいい。なのにどうして「変身ベルト」が欲しくなるか?

それは格好良いから!テレビを見てると、自分も付けたくなる(価値を錯覚する)から!


デュエルディスクは、ものの見事に玩具であり、更に、漫画の演出や「漫画世界での実用性」という意味では、「必須のもの」という説得力をも持ち合わせているのです!

 

デュエルディスクの導入により、遊戯王の漫画は、ストーリーをより自由に、濃密に描くことが出来るようになりました。

 

何しろ、舞台をどこにしようが、デュエリストが何をしていようが、

「デュエルだ!」

となったら、その場ですぐに対戦できるようになったのですから、

 

これはもう、この漫画にとって……いや、本当は、全てのカードゲームアニメに、必須といえるシステムです。

 

遊戯王という作品が、真の意味で世界中でブームになった最大の理由は、やはりこの「デュエルディスク」を使っての対戦シーンが「かっこよすぎた」という点にあるのではないでしょうか。

 

余談ですが、高橋和希氏の名言に、

「カッコいいじゃダメだ!『カッコ良すぎ』を目指せ!」

というのがあります。

 

僕もカードゲーム・アニメの原作者として、この言葉をずっと胸に刻んでいます。


さて、そんな訳で、ただ、カードゲームの対戦シーンを漫画にした、というだけでなく、

 

「カードゲームのバトルシーンをカッコ良すぎるように描くためには、どうすればいいか?」

 

という命題に向かって試行錯誤を重ね、その後も様々な革命的な「発明」を生み出し続けてきた遊戯王(5D'sのデュエルディスクは、進化の究極系)ですが。

 

他のカードゲームアニメは、どのように、カードゲームの対戦シーンを描いてきたのでしょうか?

 

果たして、遊戯王を超えるものはあったのでしょうか?!

 

次回に続きます。

 

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