カードゲームのモンスターを作る。呪われしキマイラ編

  • 2017.01.13 Friday
  • 11:11

ご存じの方も多いと思うけど、バディファイトの原作を務めた僕は、その経験で、

アニメや漫画、玩具コンテンツの設定やら原作を作るお仕事もしている。

 

カードゲームに使うような、モンスターやら魔法を作る仕事は、その中でも好きな仕事の一つ。

 

まとめて数百体以上考える必要があるから、特別な「コツ」を掴んでいないと難しい。

また、できるだけ多くの人に「格好いい!」と思ってもらえる設定を作り出す、センスも必要になってくる。

 

カッコよくなるのは八割がたデザイナーさんのおかげだけど、基本デザインの設定を考えるのは僕だ。

僕の設定がへなちょこだと、そもそもお話にならない。

 

煉獄騎士団デュエルズィーガージャックナイフ・ドラゴン等、自分でも気に入っているものも沢山ある。

 

とはいえ、数日練り込んで頑張って設定した上で、残念ながら

 

「むぅうう……格好良くなると思ったけど、コイツぁボツだ!」

 

と判断するモノも沢山ある。成功の裏には、失敗作の躯がゴロゴロと転がっているのだ。

 


ある日。奥さんと二人で散歩しながら、「撲殺天使ドクロちゃん」の歌を歌っていた。

 

妻「ぴぴるぴー♪」

僕「ドクロちゃんの持ってる杖…というか凶器(棘バット)って何だっけ?」

妻「エスカリボルク。」

僕「そうそれ。あの名前って…」

妻「エクスカリバーカラドボルクの合成よね。」

僕「うん。多分そう。それで思いついたんだけど、

既存のモンスター同士を組み合わせた新種のキマイラをシリーズモンスターにするのはどうだろう?

名前もエスカリボルクみたいにミックスして。

妻「やってみましょうか。お互いにモンスターを提示して。」(僕も奥さんも、世界中のモンスターに詳しい)

 

僕「えーと、テュポーン!

妻「ラミア!

「モンスター合成!『らみぽん』。」

妻「ゆるキャラね。」

僕「デザインしたとしても、単なる『下半身が蛇で頭の沢山ある女巨人』で個性が無いかなぁ……。」

妻「次行きましょう。」

 

「ゴブリン!」

「ペガサス』!」

「モンスター合成!『ぺがりん』。」

妻「萌えキャラね。」

僕「羽の生えたゴブリンケンタウロスってデザインだな……」

妻「可愛くもカッコよくもないわね。次行きましょう。」

 

「『リヴァイアサン』!」

「『ジャック・ランタン』!」

「合成!『ジャックさん』。」

妻「カードキングダムに居らっしゃるわね。」

僕「ダメだ。脳内で合成したデザインも、カボチャをかぶったジャック君が海で溺れている姿にしかならん。」

妻「悲惨な海難事故ね。次いきましょう。」

 

「グリフィン!」

「ユニコーン!」

「合成!『グリコーン』!」

妻「江崎グリコね。」

僕「名前の響きは格好いい気がするが、日本人としてはどうしてもそっちに引っ張られるな。」

妻「名前もどうかしら。スコーン!ってどっかに飛んでっちゃうイメージなんだけど。」

 

「ガーゴイル!」

「スライム!」

「スラゴイル!」

妻「あ、格好いい!」

僕「いや待て、僕の脳内デザインでは、

スライムの中で溺れ死んでいるガーゴイルしか浮かばん。」

また、溺死体が……

僕「スライムは要素として強すぎるから禁じ手で。

というか君の脳内ではジャック君はすでに溺死したのか?

妻「言葉が過ぎたわ。」

 

「ミノタウロス!」

「ウロボロス!」

「うろタウロス!」

妻「これは私にもビジュアルが浮かんだわ……

『うわぁ、どうすれば良いんだ!』とうろたえているミノタウロス。

僕「それは、単なる迷子のミノタウロスだよね。」

妻「迷宮で迷ったのかしら。」

僕「マイホームで迷子になるとは、なんというウッカリさん。」

妻「萌えキャラね。」


かように、モンスターの設定は難しいのである。(どう好意的に解釈しても、そうは見えないエピソード)

 

さて。

 

真面目な話、モンスターの設定にはちょっとしたノウハウとセンスが必要だ。

 

自分が設定したモンスターが、一流のイラストレーターさんの技術で、美麗なカードイラストになる。これは素晴らしくやりがいのある仕事。

だが、何百、何千ものモンスターを設定し続けるのは、何のノウハウもない常人には不可能だ。

 

ここでひとつ、僕のやり方をひとつ、簡単に説明しておこう。

 

まず、「テザインのルーリング」を決める。

例えばドラゴンは人気種族だが、適当にオリジナルのドラゴンを設定し続けても、いずれ限界に達する。

 

そこで、デザイン上の共通点やルールを作り、シリーズ化するのだ。

 

曰く、メカのドラゴンであるとか、特徴的な角が生えているだとか……

 

しかし、もういい加減、ありとあらゆるドラゴンが生み出されているので、この程度の有り触れた設定では、すぐにネタが尽きてしまう。この点には留意すべきだろう。

 

例えば「武装騎竜」は、「特定の武器に習熟したドラゴン」という設定で、何らかの武器と、それを使うに相応しい体躯やデザインを考えて設定する。

 

このルーリングなら、パラパラと「世界の武器・武具大辞典」をめくるだけで、次々と武装騎竜を作っていける訳だ。

 

「アーマナイトモンスター」は、既存の伝説のモンスターに、

「50年〜80年代テイストの野蛮な武器を、わざとまとまり無く、ゴテゴテとくっつけたもの」

というルーリングを設定した。

この場合も、手早く沢山作れる。既存のモンスターに、幾つかの特徴的な武器を指定して、デザインをおまかせすればOKだ。

 

「冒険者」はチャレンジだった。アニメの登場人物をカードのモンスターにするという発想は、今まで無かったと思う。

 

大事なのは、その「デザインのルーリング」が

格好いいものになるかどうかを、ジャッジするセンス。

 

ドラゴンの新種族を考えていた時、

「あらゆる動物をドラゴン化するとどうだろう?」

と考えたことが有るのだけれど、何体か考えた所で、

「普通のドラゴンを、かっこ悪くしただけの種族になるのでは?」

と気付いて、ボツにした。

虎&ドラゴンはかっこよさそうだが、パンダ&ドラゴンは爆笑モノである。

(いや……一周回って有りかも?)

 

今回の「モンスターを更にキマイラにする」というアイディアも、そうだ。考えつくのは誰でも出来るけど、ウケるかどうかのジャッジが難しいんだね。

 

実は以前、人材募集した時に「オリジナルモンスターの設定」を試験に出したのだけど、

 

「設定は解るが、格好いいか?それ……?!」

 

というものばかりだった。例を出してみよう。

 

◯ダチモンスター

友達や人間の関係性をカード化したシリーズ。云々……

 

これは、デザイン上のオリジナリティもなく、実際の所、単なる人間のキャラクターに過ぎなかった。

第一に「ただの人」で人気カードを作るのは難しいこと。

第二に、「シルエットが全て人型(殆ど学生服)で、パッと見のカードの差別化が難しい」

この2つで採用は不可能。

 

◯家電モンスター

ゴミ捨て場に捨てられた家電製品に、恨みのエネルギーが宿った。人間に復讐する。

 

同様の設定が3つも来た。皆そんなに家電が好きなのか?!と思ったが、多分、周囲を見渡して目についた所から発想したのだろう……

これがなぜ駄目なのか、おわかりだろうか。

 

ズバリ、カッコよくない!のである。

『唯一の超引力ダイソン』とか、名前は格好良くなるかも知れんが、送られてきたデザインは、家電に手足が生えているのとそう変わらなかった。

せめて家電をテーマに凛々しいロボットにするとかなら、話は解るのだが、それでも「設定のダサさ」は否めない。

イラストレーターさんも「かっこよくして下さい!」と言われても困るだろう。

 

遊戯王には、あえてカッコよくないモンスターのシリーズがある。

これは、「遊戯王のデザインの幅の広さ」を現すものであり、「遊戯王らしさ」という美点なので、全然問題ない。

だけど、遊戯王でも一番人気が有るのは、やっぱり格好いい系のモンスターだと思う。

 

作品の世界観に合っていて、カッコよく、なおかつ、シリーズ化すると次々にデザインを生み出していきやすいルーリング。

 

今回は、こういったノウハウの「入口」をご紹介させて頂きました。

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