2019年のカードゲーム業界はどうなるか。
- 2019.01.03 Thursday
- 15:52
皆様、あけましておめでとうございます。
まず最初に、昨年ではなく一昨年、2017年のカードゲーム業界を振り返ってみましょう。
■去年、一昨年を取りまとめた上で、今年の状況を見る。
2017年、この年カードゲーム業界は、
◯遊戯王のルール改定に伴う売り上げの半減
◯デュエルマスターズの「3年周期で売り上げが下がる年(アニメキャラクター入れ替えの為のシステムリセット)」
というダブルパンチを受け、地獄絵図とも言える酷い状況でした。
全国でカードゲームショップが潰れまくり、
「ソーシャルカードゲームの流行もあるし、アナログのカードゲームは、もう滅ぶだけなのではないか。」
との悲観的な見方が大勢を占めていたように思います。
ですが去年、2018年は、そうした逆境を跳ね除け、大幅に持ち直し、売り上げも良好な年となりました。
◯ソーシャルカードゲームは直接的なライバルではなく、動画やテレビゲーム、その他ホビーと変わらない、時間と投資に関するライバルの一つに過ぎない、という事がハッキリしてきた。
◯二大TCG、デュエルマスターズは好調。遊戯王OCGも最悪の事態は脱し、十分な規模感を取り戻した。
◯難しくなりすぎたヴァンガードがリセットに成功し、ヴァイスシュヴァルツも好調だった。
◯バトスピコラボブースター大成功。アニメが終わったにもかかわらず、奇跡的と言って良い程の復活。
◯ポケモンカードの大ブレイク。一昨年までの五倍以上の売り上げをキープし続け、人気TCGトップ3入りを果たした。
その上で今年、2019年です。これも好感材料に満ちています。
◯遊戯王OCG20週年イベントが企画されている。
◯ポケカのブームの継続。今後は、デュエマ、遊戯王に匹敵する規模を維持すると思われる。(去年のポケカブームか9月頃からだが、今年は最初からポケカによるブーストが見込める。)
◯バトルスピリッツ最高の人気作品、『バトルスピリッツ・ブレイブ』の続編アニメがスタートする。
◯デュエルマスターズは三年周期の、最も売上が高い時期に差し掛かる。
この様に、心配な要因は少なそうなカードゲーム業界ですが、実のところどうなのでしょう。確かに堅調には見えますが、新規層が入ってこない限り、櫛の歯が抜けていくように「いつの間にか人が減る」のがホビーの世界です。
その点にも留意しつつ、2019年について、僕なりに分析してみたいと思います。
■ドミネイターについて。
その前に一つ、お話しておかなければならない事があると思います。
僕が以前、Fowさんから依頼を受け「2019年発売予定!」と発表していた新しいカードゲーム企画、『ドミネイター』についてです。
まずこれについてお話しておかないと、
「2019年についての危機を煽るなり、調子のいいことを言って、自分のドミネイターに注目させるつもりだろう」
と考える方がいらっしゃると思います。僕も、そう思われて当然だと思います。なので、お話します。
ここからの話に、ドミネイターは関係ありません。率直に言って、僕としては、むしろ関係させたかったのですが(笑)、残念ながら僕は、現時点で当企画について何も言えません。
学生さんにも解るよう説明しておきますと、僕はあくまでメーカーに雇われた「原作者」であって、カードゲームを作っている人ではありますが、責任者や企画者ではないので、勝手な事は言えないのです。
多くの小売店や業界の方々が、「今年はドミネイターが出るのだから、新しい動きがある筈」と気に掛けて下さっています。本当にありがとうございます。久しぶりにブシロードさんが出す新作カードゲームである以上、主力商品の一つになる可能性が高い、とのご判断だと思いますが、ご期待して下さっている皆様に対しては、感謝に耐えません。
ですが今は、内容についてだけでなく、発売時期についても言えません。2019年に発売する!とも、しない、とも言えません。なのでここは一旦、「無いもの」としてお話を続けさせて頂くのが、筋だと思います。(無くなった訳ではありません。企画は進んでいます)
申し訳ございませんが、何事かを発表できるその日まで、よろしくお願い致します。
なので僕としてはこの記事では誠実に、「ドミネイター関係なし」に、2019年について思う所を記させて頂きます。
■2019年について。
前述した通り、大きな不安の少ない、非常に好調な年だと思われます。
遊戯王OCG20週年に関し、OCGに対しては辛口な僕も、最近のコナミさんは結構信用できそうだ、と感じています。
最近は中々に、ファンの気持を汲んだ商品構成、各種イベントを立ち上げてくださっています。(大会環境のガチっぷりはもう、遊戯王OCGというグッズが、ファンアイテムではない事を実証していますが……主人公カードが禁止にまで追い込まれたし。)
これは、コナミという会社の上層部が変わったというより、遊戯王で育った世代がコナミ、及び関連企業に入社し、企画を通せる立場に立てるようになってきた事が大きいと思われます。
僕たちの世代のガンダムもそうでしたが、
「『それ』が好きな世代が20代後半、30代に差し掛かり、企画を通せるようになると、『それ』のリバイバルブームが始まる。」
のは、当然の流れです。遊戯王は幸運にも、遊戯王で育った世代の人達が、造り手に育つまで生き延びることが出来ました。
20週年のお祭り的な盛り上がりに、期待したい所です。
僕が個人的に、今年一番の好材料だと考えているのがポケカです。
ポケカ再ブームの原因については、今までにも書いてきましたので割愛しますが、今年一年のカードゲーム市場におけるポケカの大きな役割は、何といっても新規層と復帰勢の開拓、
「現役カードゲーマーの数、そのものを増やしてくれる事」です。
20年以上の歴史を持つポケカは、より広い、「ポケモンというコンテンツに馴染みのある大多数の人達」を惹きつけます。
ポケカに触れたことの有る人も、そうでない人も含めて、「ポケモンなら解る」という人達全員のコミュニケーションツールです。社会人同士のコミュニティーでも、若い家族の間でも、地方に多いマイルドヤンキー層(学生時代からの友人関係が続いている若者層)の間でも、共通のホビーとして続けられると思われます。
そして何より、コロコロコミックの存在です。コロコロのカードゲームコンテンツとしては、デュエマ、ポケカ、バディファイトがありますが、デュエマやバディが「新しく始める子供達」にとって敷居が高めなのと比べて、ポケカは比較的始めやすいカードゲームとして映ります。(実際には結構難しいゲームなんですが、事実よりも大事なのは「どう見えるか」ですからね。)
ポケカがコロコロ誌上において、「カードゲーム一年生」を掘り起こす役割を担ってくれることでしょう。
このように2019年はポケカが、カードゲーム業界の市場規模そのものを拡大してくれる事と期待できます。
バトルスピリッツは、バトスピブレイブの続編アニメ化で復帰層がガツンと増えるでしょうし、この状況に慢心して、コラボブースターを殆ど出さない……などという方向に舵を切らない限り、市場規模の拡大は確実です。
バトスピにとって理想的な展開は、
「コラボブースターで入ってきたユーザーが、ブレイブシリーズのアニメを見て、バトスピ本編のファンになり、以降のバトスピが、「本編」と「コラボ」の二本柱で成長していくこと」
だと考えられます。
くれぐれも、「コラボブースターはあくまで、一時的なお祭りだった」という事にしないで欲しい、と思います。(そうなる可能性が無いとは言えないので、念の為…!)
他の主力級TCG、ヴァイスシュヴァルツもヴァンガードも、デュエルマスターズも今の所、大きな不安要素は見当たりません。
売り上げ上位タイトル五つだけで、全体の売り上げ80%を支えるカードゲーム業界(メディアクリエイトデータから)において、上位のカードゲーム全部に心配な要素が殆ど無いという事で、これはもう、2019年のカードゲーム業界は安泰と言い切って構わないでしょう。
そう判断出来た所で、今度は逆に、すぐに大きな問題になるとは言いませんが、一応、今後問題になるであろう事についても話しておきたいと思います。
■安定時期こそ、お店は「次の手」を!新規商材を育てるなら、余裕のある今!
今年は安定してカードゲームが売れる年ではあると思いますが、現在の所、大掛かりな新作カードゲームの発表がありません。
「今までのカードゲームが堅調」なのはとても良いことですが、逆に言うと変化に乏しい状況だと言えます。
変化の少ない環境では、気を抜くと様々な所に「飽き」が来ます。毎回、新しいカードの発売によって、エキサイティングな環境を楽しめるのが、カードゲームの素晴らしい点ですが、そういったミニマムな変化ではなく、市場全体規模の変化が小さければ、ユーザーの流動性が失われ、市場のダイナミズムが失われます。
ちょっとスケールの大きい話なので、ユーザーの皆さんにはピンとこないと思われますが、例えば、従来のTCGしか売れない状況では、
「新しい企業がカードゲーム業界に参入してこない」
とか、
「特に努力しなくてもある程度の売り上げが見込める市場では、販売店が進化しない。」
とお話すると、少し問題が見えてくるのではないでしょうか。
例えば仮に12年前、株式会社ブシロードが、カードゲーム業界に現れていなかったとしたら、どうなっていた事でしょう。
そう。あの、無数の深夜アニメの「スポンサー」であり、カードゲームのCMをガンガン流し、都内の駅をジャックして広告を打ちまくり、「カードゲームというホビーの存在そのものを、社会に見せつけ続けてきたブシロード」が、です。
カードゲーム業界だけでなく、ガチで日本のオタクコンテンツの歴史は変わっていたのではないでしょうか。少なくとも、今より元気である理由が見当たりません。
毎度おなじみ、ブシロードの太鼓持ちと言われようがなんだろうが、事実だと思うので言わせて頂きますと、12年前にブシロードが現れていなかったら、カードゲームの存在感は弱まり、今の半分以下の市場になっていたとまで考えています。
カード専門店は、今より少なくなっていたでしょうから、遊戯王もデュエマも、市場規模を維持できていなかったのは確実です。
ブシロードさんがカードゲームのCMを打ちまくって居たからこそ、「カードゲームって、今でも元気なんだ」というイメージを、社会に発信出来ていたのですし。(ホビーにとって、社会認知度は市場規模に直結します。)
無論、遊戯王やデュエマが無くなっていても、今のような状況は無かったと思うので、全ては相互補完なのですが、最初の話に戻れば、僕が何を言いたいのか、お解り頂けるでしょう。
変化があってこそ、進化のチャンスが有る。新企業が参入してこそ、業界規模が大きくなる。
カードゲーム市場が、「昔からあるTCGしか売れない」という市場であれば、これから参入する企業にとっては、全く魅力のない市場になります。
それは「円熟」かもしれませんが、そのままでは後は腐り落ちるだけ。まだまだコナミの、タカラトミーの、バンダイやブシロード、ブロッコリーの、「ライバルとなる企業」が参入して来て、画期的な商品を生み出し、欲を言えば遊戯王OCGを超える商品で、世界的な大ブームを巻き起こして欲しい、と思うのです。(ただの太鼓持ちなら、こんな事言いませんがね)
スマブラだって、新しいキャラクターが「参戦!」してこそ、従来のキャラクターの戦い方も進化する訳ですしね。
また、お店の経営者としての、長年の経験から言っても、こういう時が、実は一番危険なのだと思っておりまして。
売り上げが安定していてもお店は、怠けたりはしませんが、どうしても「現状維持」になってしまいがちです。
目に見える速度で風船が萎んでいる訳ではないゆえに、気がつくとずいぶん萎んでる!となってしまう、と言いましょうか……
今から二年後、三年後、後になって焦るんですよ。
「イノベーションに挑戦せず、気を抜いていた時期に、何か出来る事があったのではないか?!他のTCGの需要も、育てていれば良かったんじゃないか?!」
とか。
今年は、その分岐点に差し掛かる年なのではないかと思うのです。
■おまけ
実は今回、一旦かきあげた記事は、この時点でまだ「半分」なのでした。
ここから先、色々と話が盛り上がってしまったんですよ。
「カードゲームをプレイしてきた『かつての少年達』は、単純計算で800万人以上。実はアナログカードゲームは、ブームの円熟期に差し掛かったのではなく、これからこそが収穫の時期なのではないか?」
「かつて、大人達に敵視されたカードゲームは、これから先、『カードゲームで育った、カードゲームに理解の有る大人達』に育てられた子供達のものになる。」
「それは、少子化問題とコミュニティの分断の進む現在の中で数少ない、『親子や家族同士で遊べる、継続できる趣味、コミュニケーションツール』になるのではないか?」
等です。
言うまでもなく、これらは、ポケモンカードゲームが完全に担える役割です。だからこそポケカは今、その立ち位置が見直され、爆発的なブームになっているのですが……
八千万人前後とも考えられる、「一度、カードゲームに脳を焼かれた少年たち」が、ポケカだけで満足出来るでしょうか?
ここには、眠れる巨大な需要が、広大な市場があると思われるのです。
(物を売るのは、そんな単純な話でも無いんですが、大筋において。)
無論、今までと同じ売り方が通用する筈はありません。また、ポケモンのように、親と子を結べるキャラクターコンテンツには限りがあります。
しかし、どのコンテンツも最初は0からスタートです。今から、普遍的なキャラクターを生み出すコンテンツを生み出せる可能性も、無いではありません。
其のための、手段と中身を探し当てるのは難しい。しかし、親の世代に、カードゲームに対する忌避感が薄まった結果、「ここに需要がある」のは間違いないと思うのです。今後の少子化で、子供同士で遊ぶ機会が減る一方、もしかすると親子で共に遊べるホビーに対する需要が今以上に高まるかもしれません。勿論、逆の要素もありますが、上手くここに「売り込める商品」を、カードゲームで企画する事自体は、可能なのではないでしょうか…?
……などといった考察を続けてみたのですが、非常に長い記事となってしまいました。
機会があればこの点も、ブログ記事、またはツイッターで、書き上げてみたいと思います。
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